午前中にわかちゃまを保護主さんにお返しし、私は役割が役割を終える朝が来た。
湘南マラソンのための交通規制で、当初の予定より保護主さんの到着が遅れた。
「いっそ、夕方になったらいいのに。」と息子が言う。
今日は、地域の人たちとのBBQ初めで「我が家の犬のリハビリ」特効薬の日なのである。
インディも小次郎も預かり姫も、このメンバーとの日暮れまでの時間に多くを学んだ。
時間を気にせず、お陽さま次第のゆったりのんびりした外での「生活」に付き合うと、
犬は境界線のない家で一日暮らすように、行過ぎる沢山の犬や人を見ることになる。
メンバーに適当に構われ、適当に無視され、犬密度はブースの広さを調節できるので、
犬の状態や頭数や相性によって「適当さ」を守ることができる。
ノーリードには絶対にせず、でも係留されっぱなしになることもない一日を、
とても犬の扱いになれた子供たちと交流し、他所の人に叱られも褒められもし、
退屈しない程度に海岸を走ったり歩いたりしながら過ごすことができる。
「時期がわるかったよね。2~3度経験させたかったよね。」
そう言った息子はわかちゃまに「がんばれよ」と涙ぐんで布団に潜ってしまった。
新しいバリケンの入った大きな箱前にを抱え、わかちゃまと3階から地下まで階段を降りる。
大丈夫だ。ちゃんとゆっくり合わせ左に付いていて、引っ張ることはない。
行くと、保護主さんの車を見つけてわかちゃまが喜んだ。
またスージーさんとデートだとでも思ったのだろうか?
ラゲッジのバリケンに入れ、預かっていたわかちゃまの荷物を渡していると、
BBQの道具を持ったTAROさんが通りすがり、挨拶をして海に向かった。
海が大好きなわかちゃま、僕も行く!とバリケンの中で大騒ぎ。
車のドアを閉めても、吠え続ける声は外まで聞こえた。
「声がすごく大きいよね。」と保護主さんに眉間にシワで言われてしまったのであるが・・・
多頭飼育の犬は、自己主張の声が大きい傾向があるように思う。(埋もれないように)
吠えやすさには遺伝的&生育歴上の要因があるように思うが、大きさは環境で変化する。
大声を上げる必要がない環境、例えば室内では、声が小さくなるのは人間も同じだ。
北海道の農村の無口なおばあちゃんの、広大な畑出だす呼び声の大きさは凄かった!
わかちゃまも、ちゃんと聞こえるように出しているだけでこれは最大級だと説明する。
家の中では、もっと小さくて高い甘えた声で呼ぶことのほうが多い。
働き者の保護主さんは、次の預かりさんに渡してご出勤だそうである。
走り出す車に、「気を付けて」と手を振って見送った。
BBQが始まる頃になると、冷たかった風が止んで汗ばむほど暖かくなった。
あの風は、わかちゃまに付いて行ってくれたのかな?と思った。
こてつが怪我で砂浜に出られないので、小次郎がBBQに参加。
東京と横浜からの私の友人以外、すべて徒歩圏のメンバーで乾杯してゆったりと過ごす。
今日は人数少なくて、12家族程度かな?
小次郎は幼稚園~小学生の、犬の扱いになれた少女たちと遊んでいた。
今回ビックリしたのは、「湘南スタイル」で大きなGレトリバーの背中に跨っている少女。
抱っこ嫌いの小次郎が、この少女になら大人しく抱っこされちゃうのである。
この少女は、放っておいても少しづつ小次郎と距離を縮め、海岸を1時間ぐらいただ歩き、
少し休んではまた歩き、夕方には自在に抱き上げて頬擦りしていた。
しっかりものの物静かな少女で、大きくてやんちゃな愛犬のGレトリバーも、
この少女がリードを持てば引かず、執着を見せるボールも素直に渡す。
先ほど少女の父親を海に引きずり込まんとし、見せられたボールに飛びついて引ったくり、
返せと言われて唸り声をあげていたのに、別犬のように穏やかになるのだ。
牧場経営をしている先輩の末娘や、淡路モンキーセンターの猿少女と似た雰囲気がある。
これがもしかしたら・・・シーザーの言う動物が感じる穏やかさなのかもしれない。
この少女たちが動物と交流する姿には、そこだけ独特の空気があるように感じるのだ。
途中の電話で、わかちゃまがまずまず私の想定内の態度であることを知らされ安堵する。
夕方また冷えてきた頃、BBQにゲストで来てもらった友人に、私の構想を話して応援を頼む。
さらにBBQ後、息子の学校のPTA仲間と会食していると、自然と保護された犬猫の話しに。
ある団体の保護猫・保護犬の里親になられて一緒に暮らす方が8人中2人もいた。
啓蒙に何かできないか?里親募集犬猫は何処でわかるのか?
ネット環境にない方たちは、自分が親戚が近所が「いて気に入れば飼いたい」そうである。
しかし、わかちゃまの保護主さんによるとポスターはトラブルが多いとも。
だけどね、ホントウにそんな動物の家を探しながら動物愛護の啓蒙をしていくためには、
地域のコミュニティに根付いて、後の躾相談ができる窓口があった方がいいんじゃないの?
と、声が上がった。学校でキャンペーンは無理でも、子ども会は?とも。
イジメ問題と動物虐待・セラピーなどには、みな興味があるとも言う。
ネットで里親募集をし、生態展示販売の禁止を叫んでも、幼稚園児にはわからない。
実は、未来を変えるためには10歳以下の子供たちに働きかけることが重要だったりする。
昼間のBBQ仲間の母親たちは、地域の子供会の運営に熱心だ。
父親の中には、幼稚園関係者もいるし、老人福祉関連の仕事をする方も。
ネットの愛犬ネットワークも良いが、特に犬種特定になると・・・
ただでさえ閉鎖的になりがちな上に、ライン(血統)別でも面倒が起こることがある。
犬種特性やスタンダードの解釈もそれぞれで、自分の犬が基本となりがちだからだろう。
そりゃぁ、誰だって自分の犬が世界一だと思ってるのだからアタリマエだ。
それは勝手にすれば良いが、家庭犬としての社会生活に支障をきたしても、
「犬種特性」だと開き直ったり、ノーリードはどこでいつやってもノーリードであって、
それ用の施設や私有地でない限り、どんな言い訳をしても条例違反なのだという意識もなく、
ショードッグの育て方にある「自由運動」をなさる方が多いのは問題ではないだろうか?
作業トレーニング上の必要がないロングリードも、実は違反なのだ。
そう、ロングリードもフレシキリードも、犬に自由を与える目的で使ってはならない。
やはり、千の風に吹かれて何かが動き出した?
と、思っていたら・・・亡き師匠の家で私が逢ったムツゴロウ動物王国の犬の仔を、
盲導犬に育てあげた方の、3月17日18日の日記を見てビックリした。
私は彼ほどのテクニックはない。
心底ほしいけど、喉から手が出るぐらいほしいけど、ない。
しかし師匠と思った人たちに教えられたことを基本と守り、
犬たちに教えてもらったことを頭に置いて、カラダで覚えたことを基本にして、
わかちゃまにも今の私ができるだけのことはしたつもりだ。
時に、一つ一つの結果を急ぐ保護主さまに上手く言えずイライラさせてしまったが、(ゴメンね)
この方は肯定してくれたようで、涙が出た。
よろしかったら、このカテゴリ「暴れん坊将軍」の流れとあわせて読んでみて下さい。
個人の預かりでも、この程度は頑張ればできるサンプルとして。
そして保護犬の里親さんになられた方にも、参考にしていただければ。
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命があれば、レスキューできたのではない。
私も、そう思います。