ロックト・インシンドロームという重いテーマなのに、美しく軽やかな映画だった。
すばらしい映像・素敵な音楽・小粋なセリフは「フランスらしいセンス」を感じた。
主人公は雑誌「エル」の編集長として充実した生活を送ってきた42歳。
(日本人が「男の大厄年」と呼ぶ歳だ。)
ある日倒れて、体の自由「だけ」を失う。
聞こえるけど話せない。動くのは片目だけ。
言語療法士は、そんな彼とのコミュニケーション手段を考える。
そして・・・筆記してもらうことで、この映画の原作本を書く。
動かない体から抜け出し、蝶々のように自由に想像と記憶の世界へ羽ばたく。
見落とせないと思ったのは、原作を知っていてこの監督ならと思ったこともあるが、
セラピードック訓練会に参加している今、言語療法士にも興味があった。
すばらしいやりとりであったし、廊下のシーンにチラリと見えたイエローラブが、
白衣の職員と共に車椅子に寄り添って歩いているのも見落とさなかった。
夫を誘ったのは、夫の好きなトム・ウェイツの音楽が使われていると知ったから。
元「エル」の編集長。
とても女性にモテた男らしい。
だけど私には、「心だけ」の存在になってからの彼の方が「イイオトコ」。
人間の絶対的な魅力を考えさせられてしまった。
原作本の出版後、合併症を起こしてこの世を去ってしまったのが残念だ。
予定されていた2作目が楽しみになるほど、同情とは無縁の感動作品だった。
可愛そうな障碍者の映画なんかではない。
生きること・家族愛がテーマだそうだ。
私たち夫婦が出会ったのは、1999年のひな祭りだった。
あれから一体何本の映画を一緒に観たのだろう。
こんなにしんみりと、しかし「オシャレだったね」って言い合ったのは初めてだ。
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